A Rita
曲名 A Rita
作詞・作曲 Chico Buarque
久しぶりに歌の課題曲ができました☆
シコブアルキの有名曲です。
しかし私、歌詞の意味が理解できないと覚えられないという何とも損な脳ミソしてますもので、
今回もコソコソとA Ritaの歌詞翻訳をしてみようかと思います。。。
シコブアルキは、1944年生まれの詩人、歌手、音楽家、作曲家、劇作家、小説家。
父親は有名な歴史家・社会学者、
叔父はブラジル初の国語辞典編集者という超エリート家庭に育った故か、
シコの書く詩は知的で難解。
ポルトガル語で検索すると、インターネット上にも各種分析が溢れています。
A Ritaの歌詞研究もわんさかと。
でも驚いたことに、歌詞の日本語訳はどこにも無い。。。
歌詞翻訳をしてると、たまにそんな曲に出会います。
きっと、難解すぎたり、参考情報が少なすぎたりすると、
皆様訳の掲載を躊躇するのね。。。
Ritaは、女性の名前。
どうやら20年の付き合いの果てに、決別。
心にぽっかり空いた穴。
ギターまで無口になった、というラストが、
サンバっぽいというか、音楽好きのハートを掴みますよね♪
…とまあ、単純に読むなら単なる別れの歌なのですが、
世の中のシコ研究家達は、この歌詞も深読み対象にしているようです。
曰く、これは反政府ソングだと。
A Ritaが作曲されたのは1966年。
1964年から1985年まで続くブラジル軍事独裁政権の時期に重なります。
軍事政権下で政府は文化・芸術に対する執拗な弾圧を行なっており、
反軍事政権という民意を煽る物は発禁処分。
アーティストたちは、軍の検閲をすり抜けるため、
歌詞を暗喩でカモフラージュするなどして政権批判の創作活動を続けていました。
1944年生まれのシコから見ると、軍事政権が始まる1964年はちょうど20歳。
歌詞の中でA Ritaと過ごしていた20年という記述に重なります。
実はA Ritaも実は「A Dita(運命)」の意味であり、
更には「A Dictadura(独裁)」の略であるとか。
A Ritaを「独裁政権」と読み替えると、こんな具合になります。
独裁政権は人々の笑顔を奪った
ボロ服やお皿、自身の写真(=貧しい人の持ち物)さえも奪った
サンフランシスコの絵(=カウンターカルチャーの象徴)や
ノエルホーザのレコード(=過去の素晴らしい音楽?酒や女に溺れる自由?)も奪った
私の20年間(=独立した大人としての自由を夢に描いて過ごした時間)を無為にした
更に私のギターを黙らせてしまった(=創造性や言論の自由を奪った)
確かに単純に女性との別れを歌ったのであれば、
サンフランシスコとかノエルホーザの意味がよく分からなくなってしまうんですよね。
1960年代のサンフランシスコがヒッピー等対抗文化の中心地であったことを考慮すると、
反政権を比喩したという方がしっくり来てしまう。
ノエルホーザのレコードで発禁処分になったものとかあったら、完璧ですね。
そもそも若干22歳の若者が「20年連れ添った女と別れる」なんて
中年な歌詞を書くのもリアリティに欠けるし。
シコブアルキは今年70歳。
ご本人の口から解説があったらスッキリするんですけどね。
さて2014年も残りわずかとなりました。
後半特に気持ちばかりが焦る日々だった気がします。
ボサ翻訳は20曲か。。。目標達成率50%ですね。
来年はもう少しサクサクとした日常を送れるようになりたいかな☆
A Rita
A Rita levou meu sorriso
No sorriso dela
Meu assunto
Levou junto com ela
O que me é de direito
E Arrancou-me do peito
E tem mais
Levou seu retrato, seu trapo, seu prato
Que papel!
Uma imagem de são Francisco
E um bom disco de Noel
A Rita matou nosso amor
De vingança
Nem herança deixou
Não levou um tostão
Porque não tinha não
Mas causou perdas e danos
Levou os meus planos
Meus pobres enganos
Os meus vinte anos
O meu coração
E além de tudo
Me deixou mudo
Um violão
ヒタ
ヒタが俺から笑顔を奪っちまった
彼女 俺のことで笑ってやがる
俺の胸からもぎり取りって
持ってっちまったんだ
自分が写ってる写真も ぼろぼろの服も お皿も
何て奴だ!
サンフランシスコの絵も
ノエルホーザのレコードも
何もかも
ヒタは俺らの愛を切り裂いた
復讐のつもりか知らないけど
形見の一つも残さなかった
俺からはびた一文取らなかった
まぁ俺が一文無しだったからだけど
その代わりに賠償請求とか起こしてきた
俺の計画は台無しだ
20年間暖めてきた
ささやかな野望もおじゃんだ
俺の心もずたぼろだ
しかも
俺のギターまで
すっかり無口になっちまった
******
levou = 持っていく、持ち去る、奪い取る、消す
assunto = 事柄、問題、主題
de direito = 自ら進んで、自らの権限で
Arrancou do = 引き抜く、もぐ、ちぎり取る、奪い取る、取り上げる、
引き起こす、引き出す、誘う、引き離す
retrato = 人物写真、肖像画、姿、形、記述、模写、写真
trapo = ぼろ布、古着
prato = 皿、料理
papel = 紙、文書、役目、役割、責務、紙幣、手形、
vingança = 復讐、仕返し、敵討ち
herança = 受け継いだもの、敬称物、遺産、相続、伝承、伝統、遺伝
tostão = 100ルイス相当の硬貨、金額
perdas = 失うこと、紛失、消失、失踪、消滅、損害
danos = 損害、損傷、被害
perdas e danos = 損害賠償
planos = 平面、平原、市街地、設計図、計画、構想、レベル、水準、意図、もくろみ
enganos = 思い違い、誤り、誤解、錯覚、いんちき、騙し、偽り
mudo = 口の利けない、物が言えない、黙った、無言の
コード進行参考
youtube
弾き方解説動画
モデル演奏の発音が非常にクリア且つ変なアレンジを加えていないので、
歌い手さんにも非常に良い教材かと思います。
「A Rita」の「タ」の音は曇ったアなのね。
Vagalume
タブ譜付き
参考音源CD
参考WEBページ
Analise de letras
ポル語ページ。歌詞分析専門の掲示板みたいなページです。
正確性を求める人には異端なページかな。
でも、個々人が好き勝手な解釈してる、そんな自由さが私は大好きです☆
Cronicas Urbanas
ポル語ページ。
Wikipedia日本語版 シコブアルキ記事
日本語版ウィキペディア。シコブアルキの情報。
Lyrics Translate
歌詞の英訳。自動翻訳かな。でも歌詞翻訳に詰まった時には、覗いてみます。
letras.com.br
歌詞の英訳。こちらは人力翻訳です。
Esquadros
歌詞の英訳。こちらもブラジル人による人力翻訳。
NoelがJazzになっていたりと、アメリカ人向けな意訳をしている感があります。
(もしくはまさかNoel Rosaを知らなかったりして、いや、まさか。)
sulekha.com
歌詞の英訳。これも人力翻訳。こなれた英語になってる気がします。
作詞・作曲 Chico Buarque
久しぶりに歌の課題曲ができました☆
シコブアルキの有名曲です。
しかし私、歌詞の意味が理解できないと覚えられないという何とも損な脳ミソしてますもので、
今回もコソコソとA Ritaの歌詞翻訳をしてみようかと思います。。。
シコブアルキは、1944年生まれの詩人、歌手、音楽家、作曲家、劇作家、小説家。
父親は有名な歴史家・社会学者、
叔父はブラジル初の国語辞典編集者という超エリート家庭に育った故か、
シコの書く詩は知的で難解。
ポルトガル語で検索すると、インターネット上にも各種分析が溢れています。
A Ritaの歌詞研究もわんさかと。
でも驚いたことに、歌詞の日本語訳はどこにも無い。。。
歌詞翻訳をしてると、たまにそんな曲に出会います。
きっと、難解すぎたり、参考情報が少なすぎたりすると、
皆様訳の掲載を躊躇するのね。。。
Ritaは、女性の名前。
どうやら20年の付き合いの果てに、決別。
心にぽっかり空いた穴。
ギターまで無口になった、というラストが、
サンバっぽいというか、音楽好きのハートを掴みますよね♪
…とまあ、単純に読むなら単なる別れの歌なのですが、
世の中のシコ研究家達は、この歌詞も深読み対象にしているようです。
曰く、これは反政府ソングだと。
A Ritaが作曲されたのは1966年。
1964年から1985年まで続くブラジル軍事独裁政権の時期に重なります。
軍事政権下で政府は文化・芸術に対する執拗な弾圧を行なっており、
反軍事政権という民意を煽る物は発禁処分。
アーティストたちは、軍の検閲をすり抜けるため、
歌詞を暗喩でカモフラージュするなどして政権批判の創作活動を続けていました。
1944年生まれのシコから見ると、軍事政権が始まる1964年はちょうど20歳。
歌詞の中でA Ritaと過ごしていた20年という記述に重なります。
実はA Ritaも実は「A Dita(運命)」の意味であり、
更には「A Dictadura(独裁)」の略であるとか。
A Ritaを「独裁政権」と読み替えると、こんな具合になります。
独裁政権は人々の笑顔を奪った
ボロ服やお皿、自身の写真(=貧しい人の持ち物)さえも奪った
サンフランシスコの絵(=カウンターカルチャーの象徴)や
ノエルホーザのレコード(=過去の素晴らしい音楽?酒や女に溺れる自由?)も奪った
私の20年間(=独立した大人としての自由を夢に描いて過ごした時間)を無為にした
更に私のギターを黙らせてしまった(=創造性や言論の自由を奪った)
確かに単純に女性との別れを歌ったのであれば、
サンフランシスコとかノエルホーザの意味がよく分からなくなってしまうんですよね。
1960年代のサンフランシスコがヒッピー等対抗文化の中心地であったことを考慮すると、
反政権を比喩したという方がしっくり来てしまう。
ノエルホーザのレコードで発禁処分になったものとかあったら、完璧ですね。
そもそも若干22歳の若者が「20年連れ添った女と別れる」なんて
中年な歌詞を書くのもリアリティに欠けるし。
シコブアルキは今年70歳。
ご本人の口から解説があったらスッキリするんですけどね。
さて2014年も残りわずかとなりました。
後半特に気持ちばかりが焦る日々だった気がします。
ボサ翻訳は20曲か。。。目標達成率50%ですね。
来年はもう少しサクサクとした日常を送れるようになりたいかな☆
A Rita
A Rita levou meu sorriso
No sorriso dela
Meu assunto
Levou junto com ela
O que me é de direito
E Arrancou-me do peito
E tem mais
Levou seu retrato, seu trapo, seu prato
Que papel!
Uma imagem de são Francisco
E um bom disco de Noel
A Rita matou nosso amor
De vingança
Nem herança deixou
Não levou um tostão
Porque não tinha não
Mas causou perdas e danos
Levou os meus planos
Meus pobres enganos
Os meus vinte anos
O meu coração
E além de tudo
Me deixou mudo
Um violão
ヒタ
ヒタが俺から笑顔を奪っちまった
彼女 俺のことで笑ってやがる
俺の胸からもぎり取りって
持ってっちまったんだ
自分が写ってる写真も ぼろぼろの服も お皿も
何て奴だ!
サンフランシスコの絵も
ノエルホーザのレコードも
何もかも
ヒタは俺らの愛を切り裂いた
復讐のつもりか知らないけど
形見の一つも残さなかった
俺からはびた一文取らなかった
まぁ俺が一文無しだったからだけど
その代わりに賠償請求とか起こしてきた
俺の計画は台無しだ
20年間暖めてきた
ささやかな野望もおじゃんだ
俺の心もずたぼろだ
しかも
俺のギターまで
すっかり無口になっちまった
******
levou = 持っていく、持ち去る、奪い取る、消す
assunto = 事柄、問題、主題
de direito = 自ら進んで、自らの権限で
Arrancou do = 引き抜く、もぐ、ちぎり取る、奪い取る、取り上げる、
引き起こす、引き出す、誘う、引き離す
retrato = 人物写真、肖像画、姿、形、記述、模写、写真
trapo = ぼろ布、古着
prato = 皿、料理
papel = 紙、文書、役目、役割、責務、紙幣、手形、
vingança = 復讐、仕返し、敵討ち
herança = 受け継いだもの、敬称物、遺産、相続、伝承、伝統、遺伝
tostão = 100ルイス相当の硬貨、金額
perdas = 失うこと、紛失、消失、失踪、消滅、損害
danos = 損害、損傷、被害
perdas e danos = 損害賠償
planos = 平面、平原、市街地、設計図、計画、構想、レベル、水準、意図、もくろみ
enganos = 思い違い、誤り、誤解、錯覚、いんちき、騙し、偽り
mudo = 口の利けない、物が言えない、黙った、無言の
コード進行参考
youtube
弾き方解説動画
モデル演奏の発音が非常にクリア且つ変なアレンジを加えていないので、
歌い手さんにも非常に良い教材かと思います。
「A Rita」の「タ」の音は曇ったアなのね。
Vagalume
タブ譜付き
参考音源CD
![]() | パレードのあとで~ナラ・レオンを歌う (2009/07/22) 吉田慶子 |
参考WEBページ
Analise de letras
ポル語ページ。歌詞分析専門の掲示板みたいなページです。
正確性を求める人には異端なページかな。
でも、個々人が好き勝手な解釈してる、そんな自由さが私は大好きです☆
Cronicas Urbanas
ポル語ページ。
Wikipedia日本語版 シコブアルキ記事
日本語版ウィキペディア。シコブアルキの情報。
Lyrics Translate
歌詞の英訳。自動翻訳かな。でも歌詞翻訳に詰まった時には、覗いてみます。
letras.com.br
歌詞の英訳。こちらは人力翻訳です。
Esquadros
歌詞の英訳。こちらもブラジル人による人力翻訳。
NoelがJazzになっていたりと、アメリカ人向けな意訳をしている感があります。
(もしくはまさかNoel Rosaを知らなかったりして、いや、まさか。)
sulekha.com
歌詞の英訳。これも人力翻訳。こなれた英語になってる気がします。
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コメント
記事の紹介、ありがとうございます
Re: 記事の紹介、ありがとうございます
コメントありがとうございます。
私もボサノバは演奏するだけのつもりだったのですが、
歌詞を調べ始めてからより興味が沸いてきた気がしています。
また是非他の曲についても多角的な知ったことまとめを掲載してください☆
楽しみに待っています。
私もボサノバは演奏するだけのつもりだったのですが、
歌詞を調べ始めてからより興味が沸いてきた気がしています。
また是非他の曲についても多角的な知ったことまとめを掲載してください☆
楽しみに待っています。
コメントの投稿
はつかりと申します。
このたびはMas que nadaに関する記事を
ご紹介していただき、ありがとうございました。
もともとボサノバは聴くだけだったのですが、
歌詞を調べていくといろいろな発見があって楽しいです。
ブラジル、ポルトガル語の歌詞は調べるのが大変なので
このブログのていねいな内容は貴重ですね。
楽しく読ませてもらいました。
私もボサノバについて、もっと勉強していきたいと思います。
ありがとうございました。